相続放棄をすると死亡退職金は受け取れないのか
1 相続放棄をしても死亡退職金を受け取れる場合があります
相続放棄をすると、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされるため、相続財産を受け取ることができなくなってしまいます。
相続財産を受け取ると、単純承認をしたものとみなされ、相続放棄ができなくなるほか、既に行った相続放棄の効力も否定されてしまいます。
しかし、相続放棄をすると、いかなる財産も取得できなくなるのかというと、そうではありません。
相続財産ではなく、相続人が固有の権利として取得するものについては、相続放棄をしても受け取ることができます。
相続財産か、相続人の固有の権利かは、死亡退職金がどのように規定されているかによります。
2 公務員の場合
国家公務員の退職手当については、国家公務員退職手当法において、受給権者を「遺族」とし、民法と異なる受給権者の範囲と順位を定めています。
そのため、この規定は遺族の生活を保障するものと解され、相続財産ではなく遺族の固有の権利と考えられます。
地方公務員の場合も、国家公務員に準じる形で、条例で決められており、同様に考えられます。
この場合、相続放棄をしても退職手当を受け取ることができます。
3 民間企業の場合
民間企業の退職金は、就業規則や退職金支給規則などによって定められていれば、この規定にしたがって受取人が決まります。
その範囲や順位が相続人とは異なっていて、生活を保障する趣旨であれば、遺族の固有の権利と考えられます。
この場合は、相続放棄をしても退職金を受け取ることができます。
これに対し、受取人が被相続人とされている場合、退職金は相続財産となります。
この場合は、退職金を受け取ってしまうと、相続財産を処分したことになり、単純承認をしたものとみなされて、相続放棄ができなくなってしまう可能性がありますので、注意しましょう。
なお、退職金について就業規則などで定められていなくとも、退職金支給決議などにより支給されることもあります。
この場合も定め方や趣旨により判断することになります。
相続放棄をお考えの場合、死亡退職金を受け取ってもよいのかで迷ったら、まずご相談ください。